はじめてのフルート選び

「フルートをはじめたいけど、どんな楽器を買えばいいのか分からない」という方も多いかと思います。私も分かりませんでした!

習っているうちに理想のフルート像も見えてきますが、まず吹いてみないと何も分かりません。その最初のフルートとの出会いの手助けになればと、私なりに【選ぶときに見ておきたい違い】を書いてみます。

(4)Eメカニズム

Eメカ、ニューEメカ

 通称E(エー)メカ。

 フルートの構造上出しにくい、最高音域のE(ミ)の音を出しやすくするためのメカニズムです。これは、Eの運指の時、左手薬指の右隣のキイを自動的に閉じます。

なぜ閉じたほうが音が出やすいのか……最高音域のEの音を出す時、空気の振動がいちばん大きくなる場所は、左手の薬指のキーの位置だそうです。ところが、Eの運指は、この左手薬指のキーを開けます。さらに、その隣のキーも自動的に空きます。すると、振動の中心が決まらず、音が出にくくなる、ということです。

Eメカは、Eの運指の時に左手薬指の隣のキーを閉じてくれるので、うまく振動してEの音が出やすくなります。キーの配列はオフセットになります(もちろん特注すればインラインでも可能)。

しかし、「E(ミ)とFis(ファ♯)の音色が重く(暗く)聴こえる」などとも言われます。 追加の孔をひとつ開けて作るためです。

追加の孔をあけずに、特定のトーンホールを小さくすることで解決したのが「ニューEメカニズム」。Eメカでは使えない換え指があるところ、ニューEメカにはその影響はありません。しかし、第1、第2オクターブのA(ラ))のピッチに影響する場合があると言われています。

ある値段帯のものには標準装備されていますので、初心者~中級者は付いているものを買うと良いと思います。

しかし、上級者などがそれ以上の値段のものや海外のメーカーの楽器を買うときにEメカが付いていない場合、無理に付いているものを探したり追加で付ける必要は、よほど第3オクターブのEが苦手な方以外は無いのではないでしょうか。Eメカがなくても吹き方を勉強すればきちんと出せますので、そうこだわることはありません。それに、口の形や歯列によりますが(もちろん技術も)、何の苦労もない人も居ます。

「プラスにはならないかもしれないけどマイナスにはならない」から付けておく、という保険的発想も悪くありませんが、管体に施す処理と同じく、最後は気分的な問題になってきます。「無いよりは有るほうが良い」というEメカ信奉者も居ますが、逆に、「Fisの音程が悪くなる」と嫌う人も居ます。

先に述べましたが、口の形や歯列、あとは技術により必要ない人も居ますので、どちらが正しいとは断言できません。人間の耳は機械で判定する結果と同じようには聴かないものですから、振動がどうこうという理論や数値よりも、曲想が第一です。アンサンブルであったり、フレーズによっては、高め、低めに鳴らすことがあることは、中級者以上ならご存知でしょう。要するに人間の耳で聴いて違和感がなければ、問題ないということです。曲として聴いても違和感ないのに、わざわざ第3オクターブのEの音だけ聞き耳を立てて「違う」というイジワルな聴き方をするのは、先生だけでじゅうぶんですよね。。。(すみません)。

それに、第3オクターブのEの音が気になる吹き方をするレベルならば、そのほかの音、例えばCis(ド♯)などフルートの苦手な音も、そのまま吹けば鳴りが違うはずです。ひとつだけの音にこだわるよりも全体を通して練習をしていくのか?ひとつだけでも解決したいのか?好きに選んで良い問題です。

はっきり言えるのは、Eメカが付いてないのに付けるのは勝手ですが、付いてるものをわざわざ取ってくれというのは違うということでしょうかね(笑)

(5)その他

Gisオープンと、Gisクローズ

左手小指が担当するGisキーが、指を離した状態で孔が空いているのが「Gisオープン式」、閉じているのが「Gisクローズ式」。

クローズ式のほうがトーンホールがひとつ増えて、音色に影響があるとか言われることがあります。

オープン式のほうが音色もよく運指が自然、だそうですが、私は普段使っていないのでよく分かりません(ごめんなさい)。慣れれば吹きやすいようです。しかし今、一般的に流通しているのはクローズ式のほうです。オープン式のフルートはあまり目にする機会がないと思います。

U字管

身体の小さい子供のために、頭部管部分をUの字に曲げてある楽器をU字管と呼びます。

運指は普通のフルートと同じですが、重量感があります。また、組み立て方に少し迷います。諸説ありますので、先生に相談すると良いでしょう。

この写真モデルは5歳児=身長約120センチ。キーのラインと頭部管を平行にする、という組み立て方です。こうすると、ストレート管とバランスのとり方が似て、数年後のストレート管への移行がスムーズです)。

最後に

ネット上にはいろんな情報があり、いろんな意見もあります。フルートの構造や機能を知る上では便利になったとも思いますが、果たして一般の演奏者やお客様が、そこまで判別できるのか? と思うほどに考えすぎる人が多いのも事実です。

しかし、そういう人たちが居るからこそ、楽器は数々の進歩を遂げたのだし、フルートの愛好者も増えたのも事実。楽器を買うからには、出来るだけ良いものが欲しい。なるほど、と知識を増やしていくのも楽しいことですから、情報はいただいて、極端な意見は鵜呑みにせず、上手に付き合いましょう。これはネット上の社交術です。飽くまで「自分」を見失わないよう。このサイトにしても私の主観が入っていますから、意見については鵜呑みにはしないでください!

音楽に必要なのは、究極的には楽器の性能でなく心です。聴いてくれる人間は、機械ではありません。かすれた音がたまに混じる演奏と、一分の狂いもなく全部の音色の波形が揃った演奏、聴いていて飽きないのは前者です。正確であれば正しいというものではありません。同じ技術ならば、音楽が前に進んでいるとか、聴いていて心地よいほうを「良い演奏」と感じるのであって、ミスがないとか音色が揃っているとかではありません。国際コンクールにでも出るのなら話は別ですが。

こだわって楽器を買っても、上級者がそれよりランクの低い楽器を吹くほうが音色が格段に良かったりすることもあります。 楽器を買ったなら、自分の持つ楽器はこうだああだと極めつけず、いろんな可能性を引き出して、可愛がってあげてください。いつかその楽器をフルに鳴らせるときが来るはずです。